キッチンペーパーが切れたので、並んでいたうちの安い方を買った。
思いの外、硬くて分厚くて前のものより良い感じだ。
キッチンペーパーにこだわりはないのでまぁ、ちり紙より丈夫ならそれでいいと思っている。
と、思っていたのだが、もしかするとそうじゃないのかもしれない。
なぜなら…
キッチンペーパーを見ると時々思い出す、淡いが全く甘くない思い出がひとつある。
20歳そこそこの頃。
週末に泊まりで集まってわいわいする仲間がいた。
米軍ボーイと結婚したOの家にみんなで押しかけ、夜中にお菓子ををかじりながらくだらない話をして、朝方電池が切れたようにソファーで寝る。
目が覚めるとOとダンナさんはいなかった。
「あれ。2人は?」
仲間に聞くと
「車で買い物に行った」
と誰かが行った。
ワタシは風呂にも入らず寝巻きにも着替えずソファーで寝たので、なんだか気持ち悪く、さっぱりしたくなった。
しかしO夫婦はいない。
車で出かけたのでまだまだ帰らないだろう。
無性にシャワーを浴びたい、と思った。
しかしバスタオルなんて持っていない。
いくら仲良しとは言え、タンスを開けてバスタオルを探すなんてこともできない。
しかしどうしてもシャワーを浴びたい。
そこで閃いた。
キッチンペーパーが2枚あれば、なんとか身体を拭ききれるんじゃなかろうか。
丈夫だし、絞ればあと2回くらいは拭ける。
ワタシはキッチンのキッチンペーパーを2枚持って、勝手に人んちのシャワーを使った。
やはりシャワーを浴びると気持ちいい。
最高の気分だ。
さて。
髪の毛、身体とキッチンペーパーを絞っては拭き、絞っては拭いた。
なんとか拭ききった。
満足だ。
と、その時に英語と足音が近づいてきて洗面所の扉が開く予感がした。
ワタシは「ちょっと待った!」と言いながらバスタオルでボデーを隠したかった。
しかしワタシのバスタオルはたったのキッチンペーパー2枚だけだ。
しかも今となってはマシュマロの大きさに成り下がっている。
日本語がわからないOのダンナさんだ。
呆気なく扉は開いた。
マシュマロふたつではリカちゃんのボデーさえ隠せないのに、ワタシなんて隠そうとするその格好がもはやオッペケペイだ。
どんなポージングでまっ青な顔を見せたか覚えていないが、開いてすぐに扉が閉まったので、おそらく滑稽この上なかったんだろう。
気まずい。
気まずすぎる。
しかし仕方ない。
ダンナさんは目を合わさずに「何も見えなかった」と英語で言った。
そう願おう。
キッチンペーパーが硬くてシッカリしていると嬉しいのは、たぶんあの日からなんだと思う。