朝起きて、みきちゃんにLINEをする。
「今日は?」と一言。
そして1時間。
既読にならない。
これは仕事だな、と思い、送信を取り消す。
なぜならみきちゃんはいつでも自分が理解しないと前へ進めないからだ。
「仕事だけどどうした?」と返ってくるだろう返事に今タワシが考えている事を文章で伝えるのは長すぎる。
しかし説明しろ、と返ってくるだろうし、そろそろ店に行きたい。
ややこしくなるのは目に見えているので取り消した。
店へ行き、乾かしておいた、ふらふら探査機をモビールと合体させる。
本当は今日、みきちゃんを店に連れてこようと思ったのだ。
みきちゃんは対話には全く興味がないので『道草 問答』に来る必要はなく、さらにいろいろと忙しかったので開店の連絡もしていなかったが「店」という「部屋」には興味津々だったのでなんとなく、今日仕事休みなら来なよ、と言うつもりだったのだ。
タワシは昔から「遠い約束」が嫌いなのだ。
遊ぶ時は「今から」が1番良い。
いろいろ作業を終えてうちへ戻り、余裕ができたので再びみきちゃんに、今度は電話をする。
しかし出ない。
あぁ、やはり仕事か。と思ってなんやかやしていると、夕方を過ぎた頃に電話が鳴る。
出ると
「久しぶりぃ。」
「おぅ。仕事?」
「休み。」
「今、なう何やってんの?」
「子どもとゲームしてる。」
「君を店に連れてこうと思ってさ。」
「え?あれ、見せてくれんの?」
「あれ?あれって何?」
「超能力」
「違うよ、店とっくにオープンしてるけどみきちゃん対話好きじゃないじゃん。だから今日連れてこうと思ったの!」
この時点で、は?何、超能力って。とお思いだろう。
そう、この2、3日タワシは「針の先に紙を乗せて、それを超能力で左巻きに動かす」動画を撮ってみきちゃんに送りつけていたのだ。
初日はぐるんぐるん回ったものの、紙が殆ど手で隠れていたので「怪しい」と言われ、翌日はコンディションが悪く回らず、昨日はバッチリ撮れたので「すごーい!」と言われるラリーを50のおばたん2人でやっていたので、みきちゃんはそれを生で見せてくれるのか、と勘違いしていたってわけ。
超能力を見せるために会う50歳。
シュールである。
で、話のもつれた糸は解けたのだけれど、みきちゃんは「そしたらまず、お知らせの諸々を手紙でよこせ」というではないか。
「え?何で?Instagramにあげてるし、別に一緒に行けばいいじゃんか。」
「いや、まず手紙を貰わなければ前へ進めない。」ときた。
ほら、やっぱり。
「出た!前へ進めない案件!」
「何だよ、それ笑」
「いらんわ!日にち決めてうちに来て一緒に行けばいいじゃん!いつ休み?」
「水曜。」
「土曜は?」
「休みだけど週末は子どもと遊ぶから。なんだ、はやく会いたいんじゃ〜ん。」
「違うわ!遠い約束が嫌いなだけだよ。」
「そっか。じゃあ何時にする?」
「いや、約束しても、あなたいつも30分は遅刻すんじゃん。」
「え?アタシの未来がわかるの?」
「わかるよ、過去の経験から。」
「昼一緒に食べるでしょ?」
「いいよ。じゃあ午前じゃん。」
「あ、アタシ11時に接骨院予約してるからたぶん11時半には終わるかな。」
「それ、30分じゃ終わらんよ。まぁ、いいや。終わったら電話して。」
「はいよー。」
「じゃね。」
「じゃね。」
うちらは中学の頃からずっとこんなだ。
成長というもんがない。
まぁ、うちらだけにわかればいいっちゃいいのだが。
そんなこんなでそれではみなはん、また明日。
この場所で。