本が好きだ。
読めるようになったのはもうだいぶんオトナになってからで、それまではまるっきし読めはしなかった。
しかし友達が貸してくれた「パリのレストラン」を読んで(貸してくれたのに読まないのは悪いと思って頑張って読んだのだ)、自分も本を読みきる事ができるんだ、とわかったら、そっからは堰き止められていた水がぐわっと溢れ出すようにとにかく本にハマった。
駅前の古本屋へ行って50円の赤川次郎の文庫本を片っ端から買っては読んだ。
赤川次郎は読んでも読んでもまだまだあって安心した。
そこから吉本ばなな、村上春樹、恩田陸、川上弘美、梨木香歩、小川洋子…と小説を読み漁った。
他にもブックオフへ行っては100円コーナーで気になるタイトルを読み漁った。
今は全く読んでいないが本は大好きだ。
映画も読書も波がある。
ビッグウェーブが来る時とさざなみの時と。
それでも最近始めた読書会のために課題図書を読もうと努力はしている。
来月はワタシの選書だ。
目の前にあった小川洋子氏の『人質の朗読会』が目に留まったのでこちらにした。
おそらく積読だろう。
そんな気がする。
早速ページを開くと一気に小川洋子の世界が広がった。
活字だけの紙の束は、ページを広げた瞬間にその世界にすとんと吸い込まれ、空からストーリーを見下ろしている感覚になる。
この人の世界の、静かで少し不穏な空気。
霧がかかっているようなグレーの空。
言い回し。
ハッピーエンドにはならないだろうと思わせる丁寧で重たい言葉。
あぁ、好きだった、この感じ。
そしてやはりまだ読んではいなかった。
今こうやって毎日文章を書いているとわかる。
今まで読んできた作家の文体や世界観、句読点の場所がワタシの血肉になっていることを。
ワタシが作り出した新しい世界なんてない。
どれもいわば泥棒だ。
しかし盗んだ場所の寄せ集めは、それなりに新しい何かにはなっていると思いたい。
好きなんてたぶんそんなもんだ。