クロノスタシス

朝起きて顔を洗う。

布団を畳んでから一陽来復様にめちゃんこ感情込めて商売繁盛をよろしくお伝えする。

今年の正月から1度も忘れていない。

 

会社へ行くのでトレーナーを着る。

パンを食べて薬を飲んでふと見るとトレーナーに模様がない。

あれれ。

うしろまえ反対だ。

そしてすぐに思う。

どうせ外に出る時は上着を着るんだし、会社へ着いたらすぐ作業着に着替えるからこのまんまでいいや、と。

帰りに模様を前にして帰ればいい。

問題ない。

 

電車に乗る。

うっすらずーっと、トレーナーがあらわになるタイミングがあったらお恥ずかしいぞ、という気持ちが消えない。

たった3秒で着直すことができるものを、たった3秒をケチって、その1,200倍に値する1時間を地味に騒めき続けている。

 

これはもしや大問題なのではないか?

 

マグカップに注いだ熱い熱いお茶が表面張力ギリギリになった。

捨てるのはもったいないし、チビリチビリと歩いて結局こぼす。

そしたらそぉっとマグを置かなきゃならんし、キッチンペーパーを取りに行かなきゃならんし、汚い靴下で何度も踏んだ床を拭かなきゃならんし、それをゴミ箱に捨ててから、なんとなく手は洗っときたいし、まだそこそこ目一杯のマグをまたチビリチビリと運ぶわけだ。

そんな時間があったらパーティードレスに着替えてパーティーに行けるわい。

最初からちょっと腰をあげて台所に戻っておかわりをした方がべらぼうにスマートだ。

 

どうしていつもタワシは時間を雑に扱ってしまうんだろうか。

もっと愛おしく接したいなりよ。

なぜコロ助になるなりか。

 

もしも時間に色をつける事ができたら、タワシだってもっと時間を愛おしく思える。

朝起きてあらかじめ、全ての時間にいろんな色を塗る。

赤とか黄色とか水色とか。

そしたら俳優みたいに色に合わせてうまく過ごせる。

 

でも時間に色は塗れない。

 

自力で大切にするしかない。

 

できる。

オトナなんだから。

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