風の子

家を出るまで2分を切ったところでお腹様が地団駄を踏み出した。

またか…

間に合わないよ、の時間を見計らって地団駄を踏むところに朝から腹が立って仕方ないのである。

これはもう腹を割って話し合わなければいけないので、お花畑に座り腹を見ながら滔々と語る。

真摯に向き合いながらへそに雷を落とし、元の鞘に収まったのは10分後。

一本トーマスを逃したことになる。

しかし超絶心配性のタワシはお腹様が地団駄を踏む時間を入れ込んだ出発時間を毎日設定しており、遅刻はまだない。

そう、生命保険のシステムと同じである。

ほとんど使うことはないがマジの緊急事態には大変救われるのでやめられねぇ。

やっと外に出て颯爽と駅へ向かうが頭の後ろがすぅすぅする。

いつもならヘアーが被さり当たることのない風が頭皮をくすぐっている。

歩く身体のアップエンダウンと一緒にヘアーもアップエンダウン。

やっちまったな。

強力な寝癖が水をつけた程度では直らなかったのだ。

恐らく単に跳ねるとかそういう可愛らしいネグセではなく、直角に折れ曲がったヘアーが鳥の巣みたいになり地肌がこんにちはしているんだろう。

爆発だ。

しかしお腹様で使ってしまったゆえに、余白はもう残っていない。

5分に1度、今気づいたかのようなそぶりで困った顔をし、鳥の巣を触りながら「仕方なさのアピール」で会社まで行くしかねぇ。

これでオトナとしての威厳は保たれるであろう。

会社につけば皆寝癖だらけなので大した問題ではない。

よし。

会社に着くと早速K氏が「今日は仕事少ないですよ。」と言ってきた。

タワシはすかさず「また、ガセなんじゃないすか?」と言ったのだが案の定昼には大量の荷物が運ばれてきた。

K氏の声は耳を澄まさないと聞こえないほど小さいが、吹くホラはデカすぎてアンバランスなヒトだ。

仕方ない。

バランスを取ろうとして不覚にもアンバランスになるのが人間だ。

アンバランスバンザイ。

アスパラもバンザイ。

ついでに明日履くパンツにもバンザイだ。

スリムビューティーを夢みればみるほど甘い甘いお菓子が虹色に見えてくるし、やろうやろうと思う作業がある日に限ってはなちょうちんが出っ放しだ。

既に心と身体がアンバランスなタワシなのである。

やじろべぇのようなものだ。

かわいいじゃないか、やじろべぇ。

ふらふらふらふらしながらも一生懸命立っているんだから。

前に進めないのが玉に瑕だが立ってるだけで上等だぜ、タワシ。

みんなガンバレ、タワシもガンバレ。

そしてまた明日、この場所で会おう。

アディオス、アミーゴ。

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