あったけぇ気持ち

彼女が生まれた頃にはとっくにオトナになっていたタワシである。

世の中の認識も常識も総入れ替えで、それなのに日々の生活にはそういうふわっとした常識や、考えずして認識しているつもりになっているものを引きずって生きていたりするので、わかり合う事なんて普通に考えれば無理だろうと思っていた。

つまりタワシは他人を年齢で区切っていたのである。

時代と言ってもいいかもしれない。

しかしひょんなことがきっかけで彼女とは知り合い、実際に会うことはなかったが時々メッセージのやり取りをしていた。

礼儀の正しさに年齢は関係ないが、律儀な子だなぁと思っていた。

それがまたひょんなことがきっかけで、是非会おう、となったのだ。

こういう事はタイミングが重要で、なかなか会わないとなんとなく繋がりまで薄くなってしまったりもする。

しかしタワシらはタイミングもドンピシャリで晴れた休日に芝生のある公園で会う約束をした。

今日である。

ドーナツを食べてたくさん話をしようと決めていた。

ケーキは好きですか?と聞かれたので甘いものならなんでも好きだと答えた。

さて昨夜遅くにメッセージが入った。

体調を崩したという。

しかし朝起きて調子が良ければ大丈夫だから、もう一度連絡します、という内容だった。

朝、体調が良くなっていたら大丈夫だという一言、ここなわけだ。

これがタワシの心をぶるんぶるん振るわせたのである。

そう、彼女は無理をしようとしているのである。

それくらい会おうとしてくれているのである。

しかし無理は良くない。

晴れた週末なんていくらでもやってくるし、会わなきゃいけない理由があるわけじゃあなかったのだから。

それでも頑張ろうとしてくれる気持ちが嬉しいのだ、タワシは。

無理はしなさんな、また晴れた日に会おう、と伝えた。

すると今日のために自分のお気に入りのケーキ屋さんで期間限定のケーキを用意していたというのだ。

しかもふたつずつだ。

尋常じゃないスイーツ好きはくれあさんのほうなんじゃないか?

いや、夢のようなケーキを一気にふたつ食べていいよ、のプレゼントを用意していてくれたなんて。

ちょっと待ってくれ。

ここにいたのか、天使は。

タワシは天使じゃないが嬉しさで宙を舞っただに。

飛んだも同然である。

ついでにタワシも天使になったも同然である、飛べたんだから。

なんつうかもうその気持ちよね。

一個一個机に並べて何度も眺めたいくらいの思いやりよね。

どれだけ自分を思いやってくれてるかを感じてしもたら、もうこっちはそれを倍にして返したくなるわけで。

その繰り返しが信頼というものを構築していくんだろう。

今日は会うこともドーナツもケーキも食べられなかったし、さっきまで爆睡していたらしい彼女とたくさん話したわけではないが確実に昨日より仲良しになっている。

幸い体調も絶好調に戻ったようだ。

結果はバッチシオーライとなった。

そろそろ30才ってときにオギャアと生まれた赤ちゃんだぞ、おいタワシ。

恥ずかしくない態度でいなきゃ恥ずかしいぞ、おいタワシ。

背筋がピンと伸びる晴れた休日である。

ありがとう。

それではみなはん、また明日。

この場所で。

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