ピクニック

12時44分。

待ち合わせの13時まであと16分もある。

自転車移動は初めて行く場所の場合にどれくらいの時間がかかるか読めないので少し早めに出るのだが、ゆっくり走っても早く着きすぎた。

一応、早く着いた旨を伝えると、彼女はタワシよりさらに早く着いていた。

こういう驚きはタワシをとても安心させる。

芝生にフカフカのシートを敷いて待っていてくれたのだ。

どうしてママンよりも年上のタワシに声をかけてくれたのか、そのことがずっと気になっていたので尋ねるとどうやらタワシに「風が吹いていた」らしい。

zoomという文明のリキの前で、ソファーにちんまり座るタワシに風が吹いたことなぞただの一度もなかったと思うのだが、そんなポエトリーな言い回しをされてはそれ以上を聞くのは野暮というものだ。

なるほど、タワシには風が吹いているのだな。

たくさんスイーツを食べようね、とは言ったがなんとなく地元の美味しいベーグル・アンド・スコーンを持って行くと彼女も地元で1番有名なパン屋さんのパンを用意してくれていた。

またもやタワシは安心するのであった。

これではスイーツフェスではなく夏のパン祭りであるが。

気が合うかどうかはまだわからないくらいにタワシたちはお互いを知らない。

しかし価値観は確実に近似値を叩き出している。

楽しくなる事間違いない。

言葉は行動を説明するための道具のひとつだとタワシは思う。

どんなに美しい言葉でも行動が伴わないそれはあまりにも薄ぺらく、埃のようにライトである。

詩人ではないのだから。

早速対話が始まり、ゆっくりと沈黙し、経験からくる言葉が飛び交う。

パンをかじりながら。

気づけば5時間も経っていた。

うちらはともだちになったのだ。

楽しい時間もそろそろ幕を閉じる頃合いである。

フィニートには本物のスイーツを、と緑色の人魚の店へ行き、注文の仕方がわからんので若人に全てを任せる。

冷たくて甘い氷がうまい。

紅い夕陽がきれいだ。

また遊ぼうぜ、と約束し、愛車で家路へと急ぐ。

いい1日だった。

ありがとうありがとう。

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