ということでなるほどスイッチが入らないわけである。
奇遇なことに上を向いて寝ている間はフルスロットルでやる気満々らしいのだが、いかんせん夢の中なので活かしどきがみつからない。
朝起き上がると同時にポッチはOFFる。
困る。
それでも土曜の掃除は欠かさない。
日曜日の朝にキュッキュとした床の上で目覚める清潔な感覚が好きなのだ。
どうして急に妙なこだわりが発揮されるのかわからんがとにかく時々異様にこだわりが強く出て、融通が効かないので少々困る。
まだ20歳そこそこの頃。
土曜の夜から親友のみきちゃんちに泊まり、見慣れない洋楽のCDを片っ端からかけながら夜中まで話して昼に起き、ビデオ屋で借りたビデオを観たり、また話したりして夕方になる。
タワシはそろそろソワソワし始める。
あの頃のタワシは自分の家で日曜夜6時半からちびまる子ちゃんを観なければ日曜日が完璧な形で終わらないと本気で信じていた。
唐突に「じゃあ帰るわ」と言うと、みきちゃんは「なんで?なんかあんの?」と言う。
「ん〜、ちょっと観たいテレビがあるから」
「うちで観ればいいじゃん。何観るの?」
「ん〜。」
「え、なに?」
「いや、いいじゃん。帰るよ。」
「え?何なの?」
「ちびまる子だよ」
「ここで観ればいいじゃん。」
「いや、家で観る。」
「なんで笑?」
「いいじゃん!うちで観るって決めてるの!」
「じゃあ電話して録画頼みなよ!」
「生で観ないとダメなんだよ!」
「なんでせっかく遊んでんのにちびまる子観るために帰るんだよ!」
「それが決まりなんだよ!」
「は?何なわけ?」
と大ゲンカ勃発で、あれがみきちゃんとの最初で最後のケンカである。
タワシも怒り心頭で「わかったよ!ここで観ればいいんでしょ!」と気まずい空気、電気をつけない暗い部屋の中、ふたりでちびまる子を観たような気がする。
もうそこら辺はあまり覚えていないがケンカ別れにはならず仲直りして、というか途中であまりにも理由がバカヤロ過ぎて笑いが止まらなくなったのだ。
というか、そんなにタワシと居たいのか、と思った事を覚えている。
ウシシ。
コドモの頃は次の電信柱まで息を止めないとヤバイことになる、とか勝手にルールを作っては苦しくてハァハァしていた。
なんだかマジで意味不明だがタワシもだいぶんオトナになったな。
やる気スイッチに手が届かないくらい大した事じゃあないな。
背中についてるんだから問題ない。
よし、明日は清潔な床の上で目覚めて日曜日を楽しむこととする。
もうちびまる子を観なくても平気なのはみきちゃんのおかげかもしれないのでありがとうありがとう。
それではみなはん、また明日。
この場所で。