またたび何も浮かばない金曜日である。
やはり最近スランプなんだろうか。
帰りのオフィス、エレベーターでよく会う知らないおじさんは会うといつもエノコログサ(猫じゃらしの草)を持っている。
「なんでいつも持っているんですか」と今日、率直に聞いてみた。
すると「猫に。」と言って笑った。
なるほどそりゃそうだ。
猫じゃらしだもんな。
目の前で電車が行ったが4分後に次が来る。
前に立った別の知らないおじさんのシャツのボタンの4つの穴のうちのふたつずつに通す糸がそれぞれ青と白か。
オシャレ。
でもない。
入れ替わりで前に立った知らないおじさんの携帯電話のカバーはもともと透明だったのに今じゃ黄ばんでいる。
その後ろの知らないおじさんはメガネをメガネケースに閉まってから携帯電話を開く。
几帳面な老眼だろう。
マスクをしている人、マスクをしていない人。
咳が止まらずゴホゴホしている知らないおじさんはヤニ臭い。
「地球の歩き方 東京23区」をめくる知らないおじさん。
ボロボロのカリマーのリュックをだらしなく背負い忙しな気な知らないおじさん。
おじさん以外が透明になったみたいだ。
「おじさん」て一体なんだ?
「おはざん」はタワシだが。
向かいに停まっている電車はどちらかで言うならおじさんか?
おばさんか?
一軒家は?
マンションは?
カレーはおじさん、シチューはおばさんか。
日に焼けた看板はおじさんで銀行の看板はマダムだし、もう全てが分けられそうだ。
いかん、オモロくなりそうだ。
フライデーがお出ましのようだ。
タワシマニアのTシャツ、どう?
それではみなはん、また明日。
この場所で。