夜の濃さとか風の匂いとか、どこかの家の電気のくすんだ黄色とか、だいたい家に向かう途中で五感をトリガーにして一瞬でいつかの過去に引き戻されることがある。
別にその時悲しかったとか辛かったわけではないと思うけど。
思い出はセンチメンタルを5割増しでのせてくるので、意味もなくおセンチになるじゃないか、と立腹する。
気持ちは常に多忙で落ち着きがない。
職場のNさんが、革靴が欲しいとか耳がつまるとか、わざわざ話をしてくれる日常や、帰り道で前を歩くオッサン2人の世間話がなんとなく平和な気がする。
そんな事を思って歩く今夜の色や匂いが、未来の似たような夜のために種を蒔いているのかもしれない。
引き戻される感情が悲しみでも、いつかのために蒔いた種は平和の種だった、と思えば少しはましな気持ちになるかもしれないね。
それではみなはん、また明日。
この場所で。