会社を出ると空が水色だった。
冬は地平線の先にはもうない。
無性に竜田揚げが食べたい。
タワシは大の竜田揚げ好きである。
何を隠そう遺伝子の隅から隅までをFAT細胞が埋め尽くす生粋のかわいいおデブたんなのだ。
細かいことを言えばあれは竜田揚げ棒で、あれというのはセブンイレブンのからあげ棒の事で、からあげといいながら竜田揚げだよな、って気に病む人はどんくらいいるんだろう、と時々思う。
「からあげ棒くだはーい」と外国人の店員さんにお願いすると「ケチャップと辛子はいりますか」と聞かれ「いらないです」と伝えたが、袋を開けたらアメリカンドッグだったら辛いので、念のため「えと…。からあげ…」と遠慮がちに言うと最高の笑顔で「ハイ」ときたので腹を決めた。
アメリカンドッグでもいいじゃないか、と。
ホワホワのからあげ棒をかじりながら駅へ向かう。
最近おじーたんはちょっと鼻声だな、と考えながら。
昔だったら「風邪ですか?」は労わる言葉だったがコロナが流行してからはなんとなく、勘ぐっているような、責めているように聞こえてしまう気がして使えなくなった言葉だ。
確実にコロナは人の感情をひっちゃかめっちゃかにしたと思う。
タワシはより潔癖が酷くなったし、料理番組でゴム手袋は当たり前となった。
世界の常識はあっという間に変わったけれど、変わってしまえば常識は常に塗り替えられ、昔のことはほとんど思い出さなくなってしまう。
感情も上塗りされていき「仕方なく」だったのか「そうしたかった」のかを思い返すこともなくなってしまう。
人間は「今」が大事だが、今を作ったのは過去なのだ。
「今」を認識した瞬間にそれはもう本当は過去なんだから。
思い出が未来を正すこともあると思う。
さて昨日何食べたかな。
忘れちゃったな。
まぁいっか。
それではみなはん、また明日。
眠れない夜も眠たい夜も今日の終わりにNIGAOE Portraitで会いましょう。
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