雨の日は空が宝探しの焦げた地図みたいな薄茶色をしている。
冒険とは打って変わって曇天。
病院の端っこは静かでJOYの面影はどこにもない。
当たり前だけどさ。
もし今日がピーカンで院内もざわついていたらこんな気にはならなかったかもしれないなぁ。
受付が見えてきて、もしもここがアメリカングラフティーのダイナーみたいだったらこんな気持ちにはならんのかな、と思いながら、いやでもそういう雰囲気はそういう雰囲気でやっぱり違うか、と思い直し、驚くほどにスローなブギのエスカレーターを歩いて外に出た。
このまま帰るのもなんだし、カフェに寄ることにする。
なかなか人気のカフェなので何度か行ったことはあるのだけれど、そして内装もかなりタワシ好みなのだけれど、どうしてもオーナーの「何か」が合わないなぁ、と行くたびに引っかかっていたので迷ったが他にカフェもないので行くことにした。
メニューを見たが紅茶を見つけられなかった。
タワシはコーヒーで胃が痛くなって飲めないので、カフェだからきっとあるよな、という純粋な思いで「…ティーはありますか?」と質問したのだけれど、返事は「紅茶はないんです。このメニューに書いてあるものは全てあるんですけど」と普通に、全く不機嫌ではない口調で言われたのだ。
そしてスーパーネガティブセンシティブなタワシには「書いてないメニューがあるわけないですよね」と聞こえてしまった。
あぁ、ここに来ていつも感じる1%の、しかし毎回引っかかる石ころみたいな障害物はこの感じだった、と気づいた。
人気店だから、人気店のオーナーだから仲良くなったら優越感に浸れるから、という完全なるヨコシマ精神がこの引っかかりを無視しようとしていたのだ。
え、でも気持ち良くないなら気持ち良くない気持ちに素直になるべきだよな、と思い、笑顔はポッケにしまった。
長居をしてはいけないお約束も、ギリギリまで自分の時間を満喫すべく読書をした。
なんかさ、人のせいにしていたら人のせいなので、永遠に自分では解決できないわけで。
それやめてこう、と気づけた。
人に合わせて人の都合に寄せていって気分が悪かった、あいつのせいで。ではつまらん。
清々しく店を出たタワシは気分が良かった。
一個ずつ図々しくなったる、と曇天の下で誓うタワシの夕方である。
それではみなはん、また明日。
この場所で。