50円玉の憂鬱

今日は雨が降るんだお、っつうので朝の9時からスーパーへ行く。

メモに書いたものをぶんぶんとカゴに入れ、1番空いているんじゃなく、前の人のカゴの山盛り度合いで列を決め並ぶ。

タワシの前にはとあるおじーたんが並んでいた。

おじーたんは会計を終え、レジ係の人に番号へと誘導され精算機に進む。

さて、タワシの番だ。

計算が始まるとおじーたんがこちらに向かって何かを言っている。

50円がどうとか。

レジ係の人はおじーたんに背を向けているので気づかない。

「あの、おじーたんが呼んでますよ」と伝えるタワシ。

どうやら買ったものの値段が持ってきたお金よりも50円高いらしい。

つまり50円足りないのだ。

レジ係の人が「取り置きにしますか、返品しますか」と尋ねるが、おじーたんはもごもごしている。

おじーたん、どれかひとつ返品すればいいんだお、と思いながらちらりとカゴを覗いた。

オー、ノー。

おじーたんはお米10キロ一袋のみの購入だったのである。

これはどれかを返品する話なんかじゃない。

このためにてくてくヨロヨロとどこかから歩いてやってきてお目当てのものを返す以外の選択肢がないのである。

返すか、帰るか。

おじーたんにニ往復は無理ってもんだ、きっと。

タワシは財布を見た。

50円があった。

おじーたんに「どうぞ」と手渡した。

おじーたんは「いやいや、そんな」と遠慮したがそんなに大した事じゃないのでどうぞ、とタワシも引かない。

おじーたんはじゃあお名前を、とかカウンターに後で50円を渡しておきますので受け取ってください、と言った。

ここでおじーたんの事を本気で考えるならばカウンターに預けられるであろう50円を後程受け取るのが負担が少ないんだろう。

しかしタワシにはそこまでの配慮が欠如しており、返さなくて平気です。と押し通してしまった。

しばし反省。

ところがそれだけでは終わらなかった。

レジ係の人がタワシたちのやりとりを見ていて、おそらくタワシに申し訳ないと思ったんだろう。

そういう事は禁止されておりまして…となった。

レジ係の人はとても誠実な方なんだろう。

知らんぷりをしなかったんだから。

結局上司に事の成り行きを話し、あくまでもお客様同士のやりとりにこちらが口出しする事はできないとの事で、みんなで輪になって「すみません」と「ありがとう」と「いえいえ」を投げ合った。

おじーたんは最後にキャップを外して「ありがとう」を言ってくれた。

困った人を助けようという気持ちと、助け方は自分本位にさせてほしいというわがままと、見て見ぬふりをできない正義感とルール。

いろんなものが交差し、シンプルな出来事ながらなかなか事はスムーズにいかなかった。

しかしみんながたまたま結構いい奴だったんだと思う。

だから結果は上々だった。

でもなんかムズイもんなんだなぁと思った日曜ぐうたらタワシのゴロリンチョである。

ちなみに昔アルバイトをしていたカフェで同じような事があった。

お財布を忘れて注文し、会計で「あ、財布忘れた」と呟いたお客さんに、たまたま後ろに並んでいた方が即座に自分のコーヒーを注文し「会計一緒で」と支払った。

押し付けがましくなく。

タワシはあの時、いつかこんなシチュエーションが来たらタワシもこの人のように振る舞いたい、と思っていたことを思い出した。

親切のバトンは知り得ぬところで受け取られ、渡されているのだ。

 

それではみなはん、また明日。

この場所で。

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1件のコメント

いつの日かバトンが回ってくるだろうか、わくわく♬こういうリレーがエンドレスでありますよう。

グルン

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