押すな

朝4時に目が覚めて、ノコを使いたくて仕方がなかったけれどご近所さんには大迷惑だということでなんとか3時間半我慢をし、7時30分と同時にギコギコとベニヤ板を切っていた。

そこから9時には電車に乗り、東京砂漠で用事を済ませ、達成感のようなものを胸に気分良くまた帰路につく。

つもりだった。

電車が駅にとうちゃこする寸前に女性がグイッと前に入ってきた。

あぁ、我先に降りたい人種ね。と思いその後に続こうとしてほんの数秒立ち止まってしまった。

その瞬間にとしの頃は先程の女性と同じくらいの男性がタワシをグイッと押して自分が先に降りていったのだ。

まぁこういうことは日常茶飯事だし、猛烈に怒りが込み上げるけれどここはひとまず冷静な態度で、ということはできる。

しかし押し退けられた手の跡が真っ黒になって自分を腐らせるような感覚が強くなり、押し退けられ汚れた部分を何度も手で払い除けるのだ。

そしてやっと冷静になり、思う。

電車を降りるのに余計にかかるほんの数秒さえ我慢ができずに、前にいる赤の他人を乱暴に押し退けなければ生きられないような人間に一体何ができるんだろう、と。

優に60は超えているであろう人間が、その人生の大半を何ひとつ我慢できずに自分本位で生きてきた人間に何ができるというのか。

そんな些細な事で、と思われるかもしれないが、そんな些細なことさえできないなら、世界が平和になどなるはずがない、と思った。

結局まるごとバナナをまるごと食べて全てをデリートするのだけれど。

平和ってものすごく遠くて、ありえないほど繊細。

 

さてさてまた明日から振り出しに戻る。

納豆ご飯を食べてから出かけよう。

 

それではみなはんまた明日。

この場所で。

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