そうだそうだ朝電車に揺られながら昨日嬉しかったんだけどなんだったかな、と思っていた。
駅に着いて通勤の人波でサーフィンをしていたら前のほうに寝癖で四角くなったお馴染みのボーイの頭が見えた。
そうだそうだ、思い出したぞ。
彼のことは知っている。
この4月から同じビルに向かいひとつ下のフロアで降り、白いシャツに黒い鞄と黒い弁当袋。
毎日必ずこのスタイルでゆっくりと歩いている。
連日エレベーターで一緒になるのは気まずいような感じがして最近は、ボーイの四角い頭を目視すると早足でボーイを抜き、ボーイが来る前にエレベーターに乗り、ボーイが入口にとうちゃこしてない事を確認してから閉ボタンを押していた。
そう、タワシは気が小さいのだ。
ところが昨日はどの波を見ても四角い頭は見つからなかった。
しかしオフィスにとうちゃこするとボーイが今まさにエレベーターに搭乗するところであった。
オッツ。
ボーイは知らないタワシにも挨拶を怠らないグッドボーイなのだが、エレベーターに滑り込んだタワシの降りる、ボーイの階のそのまたひとつ上の階のボタンをサラリと押したのである。
ボーイ・スクエア・ボーイ。
朝からおばたんを泣かせないでおくれよ。
寝癖くらい直しなさいよとか、歩くのだいぶんスローだなとか毎朝思ってごめんだよ。
君はなんてダブル・スイートだったんだ。
挨拶もボタンも押せるなら寝癖なんて単なるファンシー・ヘッドだわ。
スポンジ・ボブだわ。
タワシのアイドルだわ。
そうだったそうだった。
今朝このとんでもなくかぁいいファンシー・ヘッドを見て思い出したんだった。
邪悪な人間が目立つ世の中ではあるけれど、スイートボーイやスイートガールもすくすく成長してんだな。
彼らのマザエンファーザーにありがとう。
昨日タワシはぽかぽかでした。
すぐに忘れちまってごめんだよ。
それではみなはん、また明日。
この場所で。