半ドン

午後から有休でまた雨。

いや、大雨。

アタイの日々が悪かったのか、梅雨のせいか。

湿気と雨のダブルパンチは頭痛にはもってこいの季節である。

タワシの頭ももちろん怪しい毎日である。

しかしここは気持ちを切り替えて久しぶりの本屋へGOとする。

4フロアだったのにいつのまにか2フロアになっている。

なんだかちょっと悲しい。

何を買うわけでもないが本屋をうろつくという行為は自分が素敵になったようで猫背もなおるっつうもんなのだ。

ここに来ればなんでもあると思ってた本屋だが、何度も名前を変えたが、ずっと詩集が充実している素敵な場所だった。

そういえば今日は見なかったような気がする。

 

小学生だったと思う。

『恋人たちの時刻』という映画がTVで放映され、その日は学習塾の日だったのでビデオテープに予約録画をし、帰るとすぐに再生した。

若い頃の河合美智子は角川がとても似合っていた。

電車に揺られながら、たしか野村宏伸だったと思うのだけれど、彼が詩集を読んでいた。

その内容が全く自分に当てはまるので驚き、そして何度もテープを巻き戻してはボヤけた画面の中の、詩集の表紙に書かれた題名を読み解いた。

『世紀末オーガズム』と書いてあった。

その時はだからどうするってこともなく、人生で覚えておかなきゃならないもののひとつとして心に刻んだだけだった。

高校生になり、学校帰りにふらっとレコード屋や本屋へよるようになり、今日行った本屋の隅に詩集だけを集めた小さな部屋のような場所があるのを見つけた。

「あ、ここにならあるかもしれない。」と思い、その小部屋にいた店員さんに「世紀末オーガズム」という本はありますか、と尋ねると「あ、はい。」と言ってさっと行ってさっと取り出して渡してくれた。

予想もしていなかった小さなことだと思っていた事を普通に知っている人がいることに感動したのを覚えている。

家に帰ってあの、映画の詩を探した。

「手を清潔にしたい そして髪をかきあげたい」

何度も何度も読んだ。

世界に自分と同じ人がいるんだ、と思って救われた。

今も本棚のどこかにあるはずだ。

そんなことを思い出しながら何も買わずに家路についた。

 

それではみなはん、また明日。

この場所で。

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