朝目が覚めると同時に鼻水が止まらなくなる。
怪しい。
花粉症の時のあの感じだ。
くしゃみも止まらない。
世間を見渡してもお花は咲いてないぞ。
花粉はどこでタワシを待ち伏せしてるのだ。
花粉症も頭痛も念力で止められない。
こればっかりは薬に頼るしかない。
しかし薬はない。
実家の食器棚を漁る。
ママンは昔っから健康なんちゃらが大好きで、うちの食器棚のどこかには万田酵素やウコンや青汁が必ずシーズン毎にコレクションよろしく鎮座していた。
ハマると何にでも効くと本気で思っているので何度騙されたか知れない。
ある時、植物にとても良い液体とやらにハマり、うちの庭の植物にたっぷり液体を垂らしていたシーズンがあった。
見かけによらず虚弱体質なタワティーヌが具合が悪いと訴えると、すかさずママンは「これを一滴飲みなさい」と言って植物用栄養剤を手渡した。
え、これ人間が飲んでいいの?と尋ねると「大丈夫だ」と言った。
ピュアーなタワシはそれを飲む。
翌日は普通に元気になっていた。のでなんか効いた気がしてそれから具合が悪いと一滴飲むというふうになっていた。
ヘソが痒くてもそれを塗った。
何十年も昔の話だ。
こないだリビングに例の液体を発見したので「なつい。これ飲んでもいいやつだよね」と言うと「それ飲んじゃダメなんだって。あはははは。」と笑った。
確かにママンは飲んじゃいなかった。
お菓子を食べると、太るだろ、と怒るくせに自分が作ったものは皿ごと平らげても「これはいくら食べても太らない」と言う。
めちゃくちゃだ。
そんなママンの食器棚にはしじみのタブレットが寝そべっていた。
花粉症に効くかなぁ、と呟くと「あぁ、効くかもね」と言った。
これは二日酔いに効くやつじゃないか、花粉症に効くはずがないだろ。
しかしコドモのママンに対する信頼度は鈍いの如く強烈なのだ。
じゃあ効くな。と、しっかり6粒食べたった。
鼻水もくしゃみも一向に止まらない。
信じるものよ、救われてほしい。
それではみなはん、また明日。
この場所で。