ママンへの不服と買い物

ママンはタワシがお菓子を作ろうとしていると、有りえない嗅覚で察知して「なんか作るの?」と、みえすいた嘘をついてもバレんぞ、といった目つきで問うてくるので毎回ケーキをお裾分けしなければならなくなる。

怖い人だ。

昨日はケーキ問題を察知された翌日に、友だちが来るのでケーキを作るんだ、と知らせた途端に「お母さんにくれると思ってたわぁ!」と叫んだので、「いやいや、全部食べるわけじゃないからちゃんと持って行くって。」と呆れた。

そんなことがあったので昨夜ケーキを献上したのだが、その後「どうだった?」と言うタワシに向かって「なんかスポンジがいつものやつより軽くてさぁ。いつももっとずっしりしてんじゃん?まぁでもイチゴと生クリームはいつも通り美味しかったからさ。」と、どの目線か知らんが偉そうに励まされたのでブチギレた。

ショートケーキで手作りパートはスポンジだけやないかい!

それを全否定しといて2度と作るもんか!と。

そして思い出す。

夜ご飯にちょっと文句を言ったもんなら急に大声で「だったら食べるな!」とよくママンに怒鳴られてたな、と。

血は争えないのだ。

 

さて本日は中野へ行ったついでにリサイクルショップを検索し、15分ほど歩く。

店内はなかなかオモロイものがあってワクワクしながらいろいろジーッと見て歩いた。

店員さんらしきお兄たんは狭い店内で品出しをしていたのか、お互いに通り道を邪魔するみたいになることが何度もあったのだけれど、始終無言だったので、とっつきにくいなぁ…と思っていた。

そして店の隅にKOKUYOのプレートがついた、テッペンが赤く塗装された脚立がひっそりと佇んでいた。

ちょうど昨夜新しい店用に脚立をググっていたので「はっ!」となり、思わず無口なお兄たんに「すみません。この脚立、あっちの鏡に映して見てみてもいいですか?」と伺ってみた。

するとお兄たんは「あ、どうぞどうぞ。」と快く承諾してくれたので狭い店内の端から端へと脚立を運んで鏡に映して見栄えを確認していたら、お兄たんがなぜかそろそろとこちらへやってきてちらちらこちらを見ている。

あ、あんまり移動とかダメだったのかな、と思い丁寧に扱ってますよアピールをしていると

「どんな用途でお探しですか」

と訊いてきた。

これこれこういう用途で〜と返すと

「あの、これ自分が買い付けた脚立で。それKOKUYOなんですよ。それに脚が丸くて、珍しいなぁと思って。」

と嬉しそうに話し始めた。

そう、たわしもこのKOKUYOと脚立のマッチングに惚れたのでそこから話が弾む。

結局迷っていた、ワンサイズ小さめの、もうひとつの脚立を購入したのだが、無口なお兄たんはもう無口ではなくなっていたし、タワシもお兄たんのおかげでこの店をいい店だなぁ、と思っていた。

センスだけは良いが中身の薄っぺらい人間と大喧嘩をしてからアンチセンスとなったタワシだが、センスの方向が似ているというのは時に人間関係を構築する上で、とんだ近道になるもんだな、と思いながらご機嫌でデッカい荷物をガラガラと引いて家路に向かうタワシは今日も幸せでした、と神様に感謝をしたのである。

 

それではみなはん、また明日。

この場所で。

 

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